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少量のフェロシリコンの溶湯流天下が片状球状黒鉛鋳鉄に及ぼす効果

 

片状と球状黒鉛鋳鉄を鋳込む時の溶湯流にSiにして0.02~0.08%のFeSiを添加した時の接種効果を調べた。
75%のFeSiに適切な粒度に揃えた希釈材を混じたものを溶湯流中接種装置を使って添加した。
片状黒鉛鋳鉄は0.02%Si相当のFeSiを溶湯流に添加された時、取鍋で0.25%Si相当のFeSiを接種添加した時と同じ程度のチル発生防止効果を発揮した。しかしながら溶湯流少量添加接種では中肉、厚肉部の共晶セル数が取鍋接種時よりも小さく、従って不健全部発生の危険も少なくなる。

溶湯流への添加量を増すと大いにチル発生量を減らし、取鍋接種時と同じ共晶セル数になる。
ノジュラー鋳鉄でも似た事が認められ、溶湯流に0.04%Si相当量を添加した時と、取鍋に0.5%Si相当量を添加した時と白銑化減少効果が同程度であった。

Mg処理した鋳鉄の鋳込み時の溶湯に接種材を添加すると白銑化の防止又は減少に、取鍋接種より遥かに強い効果があることが示されている。
同時に薄肉部に於ける黒鉛球数を非常に増加させる。そして更に溶湯流への0.1%Si接種は0.5%Siの取鍋接種と白銑化防止効果に於いて少なくとも同じ効力を有している、溶湯流にもっと多量のFeSiを加える実験も行ない、極く薄い断面部の白銑化も防止される様になるのが認められたが、しかしチル化減少に関し最も強い効果は最初の0.1%Si相当量添加までに得られた。
同様にしてネズミ鋳鉄の場合でも取鍋接種では防ぐことの出来ない薄肉部のチル発生を無くするために、或いは少量の接種材で同じ効果を挙げるために溶湯流中、後期接種を行なうことが可能である。
片状と球状の黒鉛の鋳鉄に於いて、Fe-Siの形で0.1%のSiを溶湯流添加するとその効果が非常に大きい事が認められ、よって接種の目的によってはもっと少量の添加で十分役に立つものと推定された。

考察

前回の研究では溶湯流への後期接種が片状でもノジュラー鋳鉄でも取鍋接種より薄肉部のチル発生防止に強い効果を持つことが明らかにされた。そしてこの事は今回の研究でも確認され、そして同じ効果を得るのに、取鍋接種のSi添加量の十分の一以下の非常に微量なSiで可能であることが判った。
又、片状黒鉛鋳鉄の場合、共晶セル数を増すことによってチル化を防ぐ事は鋳物の健全性を損なう可能性がある。しかしながら、チル化を同じ様に減少する少量の溶湯流接種は、共晶セル数を増加させる事が少ないから溶湯流接種によって健全性を損なうことなくチル化のみを防ぐ事が可能であることが明らかとなった。ネズミ鋳鉄の場合殆んどの接種がチルを防ぐために行なわれているのであるから、この点は非常に大きい意味を有している。

  1. Siにして0.08%迄の接種材を溶湯流接種する時に最大の効果は冷却が早くチル化しやすい薄肉鋳物を鋳込む時に得られる。
  2. 含CeのMgFeSiを用いて作ったノジュラー鋳鉄の薄肉部に発生する白銑チルを防止する効果は、0.04%Si溶湯流接種と0.50%Si取鍋接種で同じである。又、ネズミ鋳鉄では0.02%Si溶湯流接種と0.25%Si取鍋接種とが同じチル防止効果を有している。
  3. 少量の溶湯流接種でネズミ鋳鉄のチル化を取鍋での大量接種と同じ様に防止する事は共晶セル数を大きく増加させないで済むことになる。だから、チルを抑制する手段として溶湯流少量添加接種法を使用することは、鋳物の中の共晶セル数増加による鋳物不健全性の危険を増大させずにチル化だけ防げることになるのである。